· 

King's Indian Attack(KIA)対フレンチ 定跡の要点解説

現在勉強している定跡 King's Indian Attack(以下KIA)対フレンチについて備忘録を兼ねて要点をまとめていきます。

定跡の大枠がわかればマヌーバリング(駒繰り)の意図がわかりやすいと思います。

KIAは初心者、初級者、中級者、勉強時間を取れない社会人の方にとって良いレパートリーとなってくれるはずです。

また、黒でフレンチを多用するプレイヤーもKIAの狙いがわかれば対策が立てやすいでしょう。

 

KIAはどんな定跡?

KIAは上の画像のようにコマを展開し、主にキングサイドで攻撃を仕掛けていくアグレッシブな定跡です。

相手の出方を伺いながらオートマチックな駒展開をするので他の定跡に比べて勉強する幅が狭いと思います。

序盤は低く構えてスペースが狭いですが、e5突きを合図にキャスリングしたキングを狙いにいきます。

白一手目にe4から始めた場合、e6(フレンチ)、c5(シシリアン)、c6(カロカン)にこの定跡一つで対応できるスグレモノ。

黒がe5、またはd5(スカンジナビアン)を指した場合はKIAは使えません。

なので何がなんでもKIAを使いたい方はNf3から始め、g3、Bg2、と進めキャスリングをしてからd3、Nd2、e4として駒展開をしていきます。

今回は白e4に対して黒がe6とフレンチディフェンスで対応してきた場合について書いていきます。

 

KIA対フレンチの基本的戦略

KIA対フレンチにおける白の基本的戦略は

 

・駒をオートマチックにKIAポジションへ展開する

・なるべく駒交換を避ける手順で展開(特にクイーン交換)

・e5を突く(f6の地点に拠点を作る)

・hポーンを突ける所まで突く(キングサイドの弱体化)

・スペースの広いキングサイドに駒を集める

・f6にナイトまたはビショップを放り込む(gポーンに取られても良い)

・ポーン構造を壊してクイーンを中心にチェックメイトを狙う

 

以上が白の基本的戦略ですが、黒の対応によっては作戦変更が必要になります。

 

黒の基本的戦略は

 

・スペースの広いクイーンサイドに駒を展開する

・a.b.cファイルいずれかをオープンファイルにして白陣地に進入し、横からキングサイドを攻撃する

・黒キングがチェックメイトされそうな場合、主にクイーンと黒マスビショップ(またはナイト)を守り駒として活用する

・キャスリングを最大限引き延ばすこともあり、場合によってはロングキャスリング

・ロングキャスリングした場合、g.hポーンで速攻を仕掛ける(白はaポーンを突く)

 

お互いの基本戦略がわかっていれば相手の手の意味がわかりやすくなるでしょう。

 

定跡の主な流れ

それでは大体の戦略がわかったところで実際の手順を1手ずつ見ていきます。

1 e4  e6

白はe4とポーンを突きます。

黒がe5と返すとKIAの根幹である白のe5突きができなくなるので、ルイロペス、イタリアン、スコッチなどの定跡に変えた方が良いでしょう。

黒がd5と返すとスカンジナビアンになります。

 

黒がe6と返すとフレンチになります。

KIAはフレンチに対する有効な対抗手段と考えられていて、メインラインより対策している可能性が少ないので定跡の考え方を知っているだけで優位に立てるかもしれません。

2 d3  d5

フレンチでは白がd4とポーンを突いてセンターを支配するのが一般的ですが、KIAではあえてd3と低く構えてセンターの支配を手放します。

黒はd5と突いてクイーンサイドでのスペースを広くとる作戦です。

3  Nd2  Nf6

駒がぶつかり始めたのでNd2でe4をサポートしながら駒展開。

とても大切な一手で、もし黒がdxe4と交換してきた場合に白がdxe4と取り返してもクイーン交換を避けることができます。

KIAのキングサイドアタックではクイーンが一手でh5に移動してキングハントに参加する大事な駒なので必要な一手。

黒はNf6でe4に圧力をかけます。

4  Nf3  c5

白はここからまずナイト展開しフィアンケットしてキャスリングする作戦。

黒がe6と指したことでBg4の厄介なピンがないので安心。

ここでも黒がdxe4としてきても必ずポーンで取り返すこと。ナイトで取り返すとクイーン交換になってしまう。

黒はクイーンサイドでスペースアドバンテージを取るためc5と先にポーンを進めてからNc6として中央支配をする。

5  g3  Nc6

白は予定通りg3でフィアンケットの準備。

黒もナイトを跳ねてd4とe5の地点を支配。

6  Bg2  Be7

お互いビショップを展開しキャスリングの準備。

基本的にはキングを安全にしてから作戦を開始する。

黒は白のキングサイドアタックを警戒して最大限キャスリングを遅らせることもある。

7  o-o  o-o

お互いキャスリングして戦闘態勢が整った。

白は念願のKIAポジション。(黒からのポーン交換などで定跡通りにならないことがある)

白の次の狙いはe5を突いてf6の地点に拠点を作り、キングサイドに駒を集めてメイトに持っていくこと。

黒は白のe5進出を防ぎながらクイーンサイドでオープンファイルを作りルークを重ねて白陣地に侵入していく。

 

8  Re1  Qc7

白はe5突きを達成するためポーンを後ろから支える。

うっかりeポーンを取られてしまうと白のキングサイドでの攻撃が頓挫してしまうので細心の注意を払って準備しましょう。

黒はクイーンをc7へ移動してe5突きを少しでも邪魔する考え。

ここへ来て黒からポーン交換をしてもクイーンサイドのアドバンテージが少なくなるのと、白のフィアンケットビショップが強力なので

悩ましいところ。

9  Qe2  b5

クイーンもeポーンを後方支援。いよいよ突く態勢が整った。

Qe2の代わりにNf1として黒マスビショップでe5ポーンを守る駒は足りるが、

クイーンがeファイルにいることでh5のメイト作戦の含みを残しながらeファイルが開いた時の準備もしている。

特に黒がf6とポーンを突いてe5のポーンを攻撃してきた場合は白からexf6と取って、黒のe6ポーンを標的に作戦変更。

黒はb5で初志貫徹のポーン突き。

もしも黒がキャスリングしていない状態でb6とついた場合はフィアンケットしてロングキャスリングする可能性があることだけ覚えておきましょう。

黒がロングキャスリングした場合は白はaポーンで速攻を仕掛けます。

10  e5  Nd7

待望のe5突き!

e5を突くことでキングサイドにスペースができて、黒の最大のディフェンダーであるf6ナイトをクイーンサイドに追いやりキングサイドアタックがしやすくなります。黒の有望なディフェンダーは黒マスビショップだけになりましたので、黒は守り駒をどのように足すか常に考えておく必要があります。

黒のナイトはd7に跳ねて攻撃をかわしながらe5ポーンを攻撃。

実質白のf3ナイト、クイーン、e1ルークはe5ポーンを守るため一時的に動けなくなっています。

 

11  Nf1  a5

白はナイトをf1に引き、キングサイドへ回す準備と同時にe5ポーンを守るためのビショップの道を開きます。

黒はポーンを5段目に4つ並べてポーンストーム。

12  h4  b4

白も負けじとポーンを進める。

hポーンで黒キングサイドのポーン構造を壊す目的とh2→g4へのナイトの通り道を開ける。

黒はポーンを進めてオープンファイルを作る作戦。

13  Bf4  Ba6

ビショップで大事なe5ポーンの守りを足し、さらに黒クイーンが利きに入っている。

黒としては常にディスカバーアタックを気にすることになる。

黒もビショップでd3のポーンをピンしながら展開し、ポーンを突く構え。

 

以上がKIAの代表的な流れです。

この先白は黒の出方を窺いながらキングサイドアタックをしていきますので典型的な攻撃アイデアを紹介します。

 

キングサイドの攻め方

 

白はキングサイドでチェックメイトを狙ってきますので

どのようなマヌーバリング(駒繰り)をすれば良いのかアイデアを知っているだけで有利になるでしょう。

 

b1ナイトのマヌーバリング

ルークをe1へ移動しeポーンをしっかり支えた後、h4を突いてからNf1→h2→g4(場合によりNf1→e3→g4)と進め、f6の地点に放り込みます。

gポーンに取られてもeポーンで取り返し、次はg7の地点をクイーンで狙いに行きます。

 

hポーン突き

h4としてナイトの通り道を作った後、h5と更に突きます。

黒がh6とした場合、白はピースをサクリファイス(犠牲に)してキングサイドを弱体化させることができます。

黒が我慢してh6とつかない場合は、白がさらにh6と突きます。

黒はほぼ100%、g6としてポーン構造を保ちますが、f6とg7がホールとなります。

g1ナイトのマヌーバリング

g1からf3に跳ねたナイトは次にg5と跳ねて、クイーンと協力してf7、h7を攻撃することができます。

黒マスビショップのマヌーバリング

黒マスビショップはe5のポーンを守るディフェンダーでありながら、

h6やf6のマスに飛び込んでキングサイドのポーン構造を壊す役割があります。

白マスビショップのマヌーバリング

白マスビショップは攻め駒が足りなくなった場合にh7の地点をクイーンと協力して攻撃することがあります。

 

 

e5のポーンを孤立させるために黒がd4と突くことがあります。

その場合は相手のクイーンサイドを睨む強力なビショップになります。

場合によってはh7を攻撃する場合もあります。

ルークのマヌーバリング

キャスリングしてf1にあるルークはe1としてe5ポーンを後ろから支えます。

うっかりe5ポーンが取られてしまうとキングサイドの攻撃が成り立たなくなってしまうので気をつけましょう。

攻め駒がなくなったときはルークリフトをしてクイーンと協力してhファイルから攻めることがあります。

 

チェックメイトの攻め駒は3つ

キングサイドで最低でも3つの攻め駒を用意しておくとメイトできる可能性が高まります。

黒も弱点を守ったりピース交換をしてメイトを防ぎますので、

攻め駒が足りなくならないようにしっかり準備してからピースサクリファイスをしましょう。

 

以上がそれぞれの駒の典型的なマヌーバリングです。

 

有名なタクティクス

 

画像のようにビショップがクイーンとぶつかっている場合は

Nxd5!のタクティクスが決まります。

黒がexd5と取り返してもe6でビショップがクイーンを攻撃しながらポーンでナイトを取り返しeファイルから攻撃します。

(ナイトを取らずf7を取ってキングサイドを弱体化させてメイトに持ち込む場合もあります)

 

KIAはボビー・フィッシャーも愛用した定跡で、名局が残っていますので下の動画を参考にしてください。

英語解説ですが試合の流れを掴むには良いと思います。